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ギフテッド(2巻)の解説② ※ネタバレあります

ギフテッドの2巻が発売し、もしかしたらあとがきからこのブログ来てくれている人がいるかもしれないので、
せっかくだからあとがきで書ききれなかったギフテッド執筆の裏話や解説を書いてみたいと思います。
もちろん編集者さんが見ても問題のない範囲で行う予定ですし、
その他影響がないだろうと思う範囲で書くので、足りない部分についてはご容赦を。
2巻まで読まれた方を前提として書くので、ネタバレが嫌な方はお戻りください。

これはギフテッドを楽しんでいただいた方により楽しんでもらえるよう、補足をするものです。
そのため、読まれた方の考えや抱いた感情を否定するものではありません。
ギフテッドの作品を否定するものだとしても、それは真実だと思います。
私の解説などは、所詮盤外からの後付けです。
ただ作者はこう考えていた、という発見によって、楽しんでもらえる方がいれば幸いと思い、書いていきます。

これを読むことが蛇足と感じる人もいるでしょうし、表現一つを取られて叩かれると心が死ぬので、
嫌悪を持たれる方は見ないでいただけると助かります。

それでは2巻の解説を。
思い出したごとに書いていたりするので、読みにくい点はどうかご勘弁を。
改行を入れるので、読まれる方は下のほうに行ってください。



























■前提
私は一つの考えが正しいと思わず、物事は多面的だと考えているタイプですので、
ここに記載することも考えの一部であることをあらかじめここに記載しておきます。



さて今度は、捨丸について触れましょう。
一言で表現するなら、『問題児』です。

これはあとがきがもう1枚あればネタにしようと思っていたのですが、
プロット(あらすじのようなもの)を提出したとき、編集者さんに「いいですか?」と確認し、
初稿を書き上げた後でも「やっぱり削除しましょうか?」と問い、
修正後も「大丈夫でしょうか?」と聞いたりしました。

それほど私自身入れるか悩みながらも、プロットの段階から入れていたのは、
彼の持つ『暴力』と『不確実性』が欲しかったからです。

1巻や2巻でも強調されていますので、繰り返しになってしまい申し訳ないのですが、
私は『暴力』を非常に強いものだと思っています。
どれだけ頭脳を巡らせても、『暴力』はあっさりと覆します。
それほど恐れるべきものなのだと考えています。
現実において『外交力』が『軍事力』と連動しているように、これは外せない点だと考えています。
そのため国の行く末がかかっているのに、
『暴力』や『軍事力』が関わってこないのは、私にとって不自然に感じるものでした。

最近のアラブの春などが最近の代表でしょう。
むしろ荒れるのが当然だと私は思っています。
そのため最後のクーデターは、私にとって外したくないものでした。

個人における『暴力』と軍隊における『軍事力』はそれぞれ使いどころが違い、役割と使い方があります。
極論を言えば、範馬勇次郎が味方にいれば、選挙で策を弄する必要なんてありません。
相手を潰して終わりですから。
逆にこのとき、軍隊で攻めると目立つので不向きだと思います。
そのためもし捨丸の改造が完璧に行われていれば、
『頭脳』も『感情』も立ち入る余地はなく、捨丸が綾芽とケネスを暗殺し、勝負はそれで終了だったと思います。

こうしたことができることに『個人の暴力』のメリットがあり、
倫理を捨てても叶えたいことがあるならば、手に入れておきたいものの一つだと私は思っています。
様々な戦争時に人体実験の話が出てくるのは、それを証明するものに思えます。
そうして生まれたのが捨丸です。

現在でも両足義足の世界記録は10秒台ということを知り、
10年後、しかも技術が現実より発展した世界においては、
人体改造すれば相当なところまで行くだろうと考えています。

「ギフテッド」には「世界のトップに立つ人間とは、どんな人間か?」というテーマがある以上、
あらゆる面において人間の限界を探りたいと私は思っていました。
それは無論、頭脳や精神においてだけではなく、肉体としても、です。

じゃあある程度の「軍隊」と倫理を抜いて改造された「個人」はどちらが強いのか。
これに対し、私の出した結論が、個人の方が強いのではないかというものでした。
それは私の予測ではなく、提示として2巻に書かせていただきました。

今度は『不確実性』についてです。
戦争は思い通りにいきません。
歴史を調べるほど、おいおいと言いたくなるような些細なことが戦争の趨勢を決めた出来事が出てきます。
その『不確実性』をいつ爆発するかわからない爆弾のようなキャラクターに託したい望みが私にありました。
また平和な日本にいると見落としがちですが、『暴力』は世界的にはよく使われる手法であり、
国によっては当たり前のように使われる点も、『暴力』を象徴するキャラクターを入れたかった部分です。

研究所からの脱出、そしてクーデター時の捨丸の動きは、
『暴力』や『軍事力』によって積み上げたものも簡単に崩壊してしまうこと、
そしてエンターテイメントとしての演出面を考慮した上で決めました。

しかし頭脳戦を期待している方からは非難が出そうだなーと思っていたため、
編集者さんに何度も確認していたわけです。
ただ医局内での政治闘争とは違うため、頭脳による争いだけでは不自然と考えており、
『捨丸を入れる』というのが、プロット段階からあったわけです。

まあいろいろと書きましたが、純粋に楽しんでいただければこれ以上嬉しいことはありません。

なお、もし捨丸がカットだった場合、上記のコンセプトがなくなり、ページ数にも余裕が出るため、
次善の案として用意していたのは『候補者三名によるテレビ討論会と、その裏幕』でした。




せっかくクーデターのところの話が出たので、長良喜平の動きに関しても少し触れましょう。

長良喜平は海外で活躍していたサラリーマンのため、
政情不安定な国でクーデターが起こっているのは当然のごとく知っていますし、
軍事が国にとって大きな要素であることは肌で知っています。
そのため取った手法が、軍隊の情報を操るというものです。

彼の性格を考えると、三人の候補者の中で一番やりにくかったのは将軍でしょう。
一番自分の思うように動かせませんから。
それを理解していながら、サラリーマンの優秀さを誇示したい彼は、後から候補者を選ぶ状態にしています。
その状態とするには、勝てる算段がなくてはなりません。
そのため彼が誰を敵に回しても勝てるようにした手法として、

・ジュニアは過去の醜聞を集める
・大富豪は汚職の事実を突き止める

となっています。
これらは切り札として取っておき、いざというときの交渉材料としていました。
あっさり公表しては手を結ぶのは難しいですが、内に秘めておくことで、
手を結ぶ可能性も考慮していたのです。
そのおかげで、大富豪を一本釣りするという方法を取ることができました。

しかし将軍にはこれといって弱点と呼べるものがありません。
そのため彼が用意したのは、軍隊の情報を操るというものです。
他の候補者の弱点を握る努力と同様の努力で、軍にシンパを作ったりや仲間を潜入させ、
自分の思い通り動かせるようにセッティングをしていました。
もし応援する候補者が将軍以外であった場合、彼はきっと
『将軍が国を売ろうとしている』など、将軍に不信感を抱かせる情報をばらまき、
将軍を軍のトップから引きずりおろしたことでしょう。

今回は味方だったのでその方法は使いませんが、勝利を確実にするために、工作はしていました。
それは将軍の信望を高めさせる情報を流す、というものです。
独立戦争を戦ってきた兵士は将軍を信じていたので、それに油を注いでおいたのです。
そうしておけば万が一負けたとしても、クーデターが起きて、ジュニアと大富豪を殺すことにより、
自動的に勝利が転がり込んできます。
この点は先ほど解説した『どんな頭脳戦や結果も暴力であっさり覆ってしまう』ことを、
長良喜平がよく理解していたことがわかる部分だと思います。

ここまで万全にしていた彼が負けたのは、やはりジュニアの躍進でしょう。
これにより、軍隊内部でも揺れや焦りが出て、暴発が早まったのです。
独立戦争を戦った軍隊を外部の人間が思いのまま操るなんて、
相当な手並みを持った人でも困難なことだと思います。
ケネスによって発生した予定外の出来事が、成功率の低いクーデターを誘発し、
予想外の敗北をすることになったことは、彼のとっさの機転の弱さが出た部分でもあるでしょう。
恐ろしいほど準備周到で、逆にそれがゆえとっさの機転が弱いという点は、
日本人らしいと言えるかな、と思います。




今回綾芽は大富豪を選びましたが、その選択は間違っていたのでしょうか?
私は間違っていなかったと思います。
少なくとも、ジュニアや将軍を選ぶよりずっと良く、
現状の綾芽にとって一番組みやすい相手を選んだと考えています。

綾芽がジュニアを選んだ場合、ジュニアを立ち直らせる行動は取らないため、
反発し合い、長良喜平の罠もあって、勝利することは不可能だったでしょう。
問題は将軍を選んだ場合ですが、天子峰に反感を持つ将軍との融和を図れなかったと思います。
おそらく綾芽は下手に出ず、将軍とぶつかったでしょう。
それではダメだと考えて策を弄しても、理性が強く、戦場を潜り抜けている将軍は、
綾芽の企みに気がつき、より深い疑念を抱くようになると思います。
将軍を選べば勝てたかも、と思っているのは弥助であり、その判断は間違いだと思います。
そしてそれが弥助の能力の未熟さでもあります。

ただ弥助がリーダーとなった場合は別です。
弥助がリーダーで、将軍と組めば、ぶつかり合いはほぼなくなり、やがて友好も芽生えたでしょう。
弥助は打算のない人間(というより、頑張っている人に対しては私欲なしに理想論を優先する人間)なので、
将軍はその点に気がつき、態度を軟化させたと思います。
そうなれば勝てる可能性はあったでしょう。

綾芽の持つ『欲』と『甘さ』はアンバランスであり、それ故、大富豪を選ぶ以外
まともに策を進めることすら難しかった状況だったと思います。
エルは勘によって最善が将軍と見抜きましたが、
綾芽自身も自分の自己分析によって最善の相手を選んでいたのです。
綾芽自身が人によって最善は違うと言っていますが、あれが露骨に出ていたのが、候補者選びだったと思います。

ではどうやれば綾芽が勝てたかですが、一つは今より度量があればそれだけで勝てたと思います。
綾芽が大富豪を選ばなければまともに戦えない性格だった時点で度量は足りないのであり、
これが社交性の重要性とも繋がり、能力だけでは勝てないことを示しています。

それが現状ないということで、最善の大富豪を選んだ上で勝つには、『甘さ』を捨てる必要がありました。
私は思います。なぜ綾芽は、大富豪を裏切らせないため、人質を取ったりしなかったのか、と。
手段は何でもいいと思います。とにかく裏切らせないことは絶対にしなければならなかったのです。
例えば三里信一郎であれば、特に何もしなくても大富豪は裏切らなかったでしょう。
ズバズバ心の中を言い当てられれば、それだけで恐怖心は湧いてきます。
悪魔とも思える所業を平気で行う人間であることを知れば、裏切ったらどうなるか想像し、
長良喜平が声をかけても恐ろしくて裏切ることはなかったでしょう。

『甘さ』は人にとって魅力的に映るときもありますが、それは相手によってです。
弥助はその点に興味を抱き、評価していますが、その『甘さ』を弱みと思う人間には通用しません。
大富豪は少なくとも綾芽の『甘さ』を好意的に解釈する人間ではなかったので、
それが裏切るという結果に繋がったのだと思います。
『甘さ』を見せる相手を誤り、徹底さを欠いたところが綾芽の未熟さでしょう。
こうした精神のバランスの悪さが綾芽が能力を活かし切れていない点だと思います。

その点、弥助は安定度が高く、綾芽よりはずっと能力を発揮できています。
それが現れたのが『プロデューサー関連のシーン』であり、『長良喜平の勧誘を断ったシーン』だと思います。
『長良喜平の勧誘を断ったシーン』は断っても大変なことになりましたが、
もし断らなければ『弥助の心に弱点が発生する』という自体になったので、
助かって以後、大きな悩みの種となり、勝負を決定づけるものになっていたと思います。
それが断ち切れたのは、彼が優先順位を間違えず、私心の甘さを捨てた結果でした。
それが今回の二人の評価に繋がります。
綾芽は二面性の持つ長所と短所をもっと操り、長所を場面によって使い分けができるようになることで、
ようやく本当の能力が発揮されると思います。

結構散々に綾芽をこき下ろしていますが、それでも能力は秀でており、
弥助が綾芽の指示待ちになっている部分などは、絶対能力の差を示すものだと思います。
逆に安定した力を持っている弥助ですが、今までになかった感情が芽生えることで、
弱点が大きくなると同時に、自らの殻を破ってより大きな力を手にしようとしているのだと思います。

自分の力を発揮できず、一流になれないことはよくあることです。
しかし綾芽は負けたことがわかった後でも、最善を尽くし、ジュニアを勝つところまで持って行きました。
弥助も独白していますが、決戦投票に持ち込まれるには、弥助の力より、
綾芽の裏の動きのほうが大きな影響がありました。
大富豪を一本釣りされ、自らの勝利が得られないとわかっていながらも、
腐らず自らが作り上げた勝利への準備をうまく使いきったのが綾芽の矜持であり、
幹部として上にあがれるだけの資格を持ち合わせているところを見せつけた部分だと思います。
ここでもし腐っていれば綾芽は幹部に残ることはできず、幹部補に落ちていたことでしょう。


とりあえず解説はここで区切りをつけます。
ネタはあるんですが、書いていいのかなぁ、という部分もあるので。
もしこの点について解説して欲しいということがあればメールでどうぞ。
また、思いついたら追記するかもしれません。

今後はだらだらとした内容のブログを続けていくと思いますので、つまらん内容ばかりですみません、
と今のうちに謝っておきます。

それではここまで長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。


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  1. 2012/05/30(水) 22:39:43|
  2. 本の解説
  3. | トラックバック:1

ギフテッド(2巻)の解説① ※ネタバレあります

ギフテッドの2巻が発売し、もしかしたらあとがきからこのブログ来てくれている人がいるかもしれないので、
せっかくだからあとがきで書ききれなかったギフテッド執筆の裏話や解説を書いてみたいと思います。
もちろん編集者さんが見ても問題のない範囲で行う予定ですし、
その他影響がないだろうと思う範囲で書くので、足りない部分についてはご容赦を。
2巻まで読まれた方を前提として書くので、ネタバレが嫌な方はお戻りください。

これはギフテッドを楽しんでいただいた方により楽しんでもらえるよう、補足をするものです。
そのため、読まれた方の考えや抱いた感情を否定するものではありません。
ギフテッドの作品を否定するものだとしても、それは真実だと思います。
私の解説などは、所詮盤外からの後付けです。
ただ作者はこう考えていた、という発見によって、楽しんでもらえる方がいれば幸いと思い、書いていきます。

これを読むことが蛇足と感じる人もいるでしょうし、表現一つを取られて叩かれると心が死ぬので、
嫌悪を持たれる方は見ないでいただけると助かります。

それでは2巻の解説を。
思い出したごとに書いていたりするので、読みにくい点はどうかご勘弁を。
改行を入れるので、読まれる方は下のほうに行ってください。



























■前提
私は一つの考えが正しいと思わず、物事は多面的だと考えているタイプですので、
ここに記載することも考えの一部であることをあらかじめここに記載しておきます。



ギフテッドの2巻のテーマは「アンチギフテッド」でした。
これは気づかれた方が多かったかもしれませんね。

企業で言うと、入社したばかりでは、とても優秀と言われた人でも苦労することがほとんどだと思います。
綾芽は同期の中でナンバー1でしたが、あくまで同期の中で、です。
そして三里信一郎のように、1日で候補生試験をクリアするなど、
例年に比べて明らかに圧倒しているといった勝利もしていません。
そんな彼女が仕事に出てきていきなり大活躍!という方が、私にとって不自然でした。
綾芽は普通の会社に入ればいきなり活躍できただけの能力を持っていたかもしれませんが、
天子峰はそんな人ばかりでできた会社という設定です。
だからある意味、普通の人が普通の企業に入ったときと同じような状態だったと思います。
それが今回の結果です。

大学などで凄い凄いと言われた人でも、会社に入って新入社員になるとボコボコに叩かれる。
そんな2巻でした。

サクセスストーリーではよくある展開だと思います。
うまくいってどんどん行くぞと思ったら、新たな試練が降りかかってくじけそうになる。
そんな上がり下がりがあるから、サクセスストーリーはいいのではないかと私は思っています。
以上により、2巻を書いていいと言われた段階で、私の中で綾芽が負けるのは規定路線でした。

能力が高いキャラクターが『能力じゃないところで負ける』という点が
今回の「アンチギフテッド」を意味しているところです。
なぜなら『能力じゃないところで負ける』という点は会社において、そちらの方が当たり前だからです。
問題は負け方です。
『何に』負け、『どんな』負け方なのか。
それは私の伝えたいことと密接に関わってきます。

綾芽はケネスと長良喜平、どちらにも完敗します。
長良喜平に負けた大きな点は『経験』の差です。
私は長良喜平より綾芽のほうが頭がいいと考えていますし(まあ『頭のいい』の基準は人それぞれですが)、
準備不足も綾芽に経験があれば跳ね返せたものだと思っています。
テレビのプロデューサー買収で引っかかりそうになったり、大富豪に裏切られるのは、
その経験不足が露骨に出たと思います。
一長一短ある性格を飼い馴らせないのは子供であり、
短所に関して自分を見つめ切れていないのも経験不足を示すものです。

弥助もミスはあります。
例えばエルとアイシャの相性がいいだなんて最初は考えていた、なんていうのは、まだ未熟な証拠だと思います。
エルは表面上活発ですが、内面は臆病で、矛盾した面も持ち合わせており、複雑な性格です。
アイシャは控えめに見えて、内面はかなり直球であり、エルとは逆の性格です。
ただし根っこでは一致する面もあるため、最悪の相性ではありませんが、
仲良くなるためにはいろいろとハードルがある気がします。
それが感覚的にわからず、改善案を出せないのが、弥助の未熟なところのように思えます。
弥助は『自分』と『他者』の相性は見極められるようになってきていますが、
『他者』と『他者』の相性までは見極められません。
その辺りが高校生らしい未熟さかな、と私は思っています。

『経験』とは曖昧なものであり、なかなか能力の一つとしては数えにくいものですが、
非常に重要なものだと私は考えています。
そのため『経験』が単純な『能力』に勝つようにしたかったのです。

しかしその『経験』も別にものによって破れます。
今回で言えば『人を動かす心』です。

人間において、心(感情)は絶対に引き離せないものです。
そのため会社において、社交性があることは能力を持っているかより前に問われるものだと考えています。

どれほど論理的な説明をしても、感情論に負ける不条理は、社会ではよくあると思います。
個人的にはあまり肯定したくないのですが、事実として受け止めなければならないと思っています。
そのことを認識し、対応するのが大人なのかな、とも思います。
そういった意味では綾芽は子供として、そしてケネスは大人として描きました。
もちろんケネスには他の手法がなかったのですが、信頼し、人の心を動かせるという『武器』は、
現時点の綾芽が持つ頭脳より遥かに強い『武器』だと私は考えており、それを示したかったのです

私がひねくれているだけかもしれませんが、サスペンスで崖にやってきて犯人を論破するとき、
なぜ犯人は開き直って探偵役を押さないのかよく疑問に思っていました。
カイジ風に言えば「押せっ……!」です。
それで積み上げてきた論理は、たった少しの『感情論』によって破れ去ります。

そしてまたその上に、すべてを覆してしまうものがあります。
それが『運』です。
私は弥助の隠しパラメーター的要素に、『悪運が強い』があるとしています。
長良喜平がそこを指摘しましたね。
悪運がなければ、1巻時点で負けています。
今回では捨丸の存在、そしてギリギリでナバサの人たちが駆けつけてくるのが運のいい点です。

しかし運の良さも、活かせなければ意味がありません。
最善を尽くし、信頼の種を蒔いていたからこそ、救われたのだと思います。
どこかおかしな捨丸に対して、ドン引きするのではなく、むしろ親しみを持ったため、
彼を目覚めさせることができたり、助けに来てくれたりしたのだと思います。
またナバサの人たちも、『見返りを求めない優しさ』があったからこそ、
窮地に駆けつけ、クーデターの際も真っ先に逃そうとしてくれたのではないでしょうか。

過去の英雄たちは、後世から見ると事実だから受け入れられるものの、
おそらく当世の人から見たら物凄く都合のいい結果となった事象が存在します。
私はその中で、『その運を引き込む行動をしていたか』について重視しています。

私は弥助の中でもっとも異常なのは、『見返りを求めない優しさ』を平気でするところだと思っています。
そしてそれが『悪運が強い』となる要因だと私は考えています。
『見返りを求めない優しさ』を持つ人間は私にとって憧れであり、『理想』でもあります。
そしてそういった人間が報われることも、現実ではなかなか起こらない『理想』です。

どこまでストーリーの様式を貫き、現実と理想のバランスを取るのか、私は非常に悩みます。
能力を持たないケネスが様々な能力を持つ綾芽に勝ってしまうことについては、
私にとって『現実』を選択した結果であり、
そのことによってライトノベルのメインユーザーである中高生に
人と関係を作ることの大切さを語りたいという私自身の『理想』を入れ込んだ結果が現在のものとなります。
そしてクーデターが起こってしまうことは、独立まもない国での選挙にも関わらず
綾芽と弥助が軍隊に気を払わなかった『現実』的結果であり、
それが運によって助かってしまうのは『理想』、と私は想定して描きました。
そうした現実と理想を両極端に描くのが「ギフテッド」であり、
サクセスストーリーであると言える大きな部分でもあると考えています。




ケネスとジュニアのシーンについて。
ケネスによってジュニアが立ち直る部分は、二つの考えから私はストーリーに入れました。
一つは選挙の結末についての考えです。

第二章辺りでかなりのページを割いて選挙に関する説明をしましたが、
これを受けて問題となるのが、どういった内容によって選挙の勝者が決まるかです。
私は選挙の批判をするつもりは毛頭ないので詳細は避けますが、
「騙すこと」によって勝つこともあると思っていますし、
「軍事力」によって勝つこともあるともちろん思っています。
むしろそうした「政策」や「人格」によらない勝利のほうが、選挙というものにとって、自然な気がします。
「ギフテッド」が大人向けのものであれば、
私はおそらく、より悪巧みをしたほうを勝利するように書いたと思います。

しかし私の考える自然さをねじ曲げて現在の結末にしたのは、やはりライトノベルだからです。
中高生がメインターゲットだからこそ、もう少し善意による結末が描きたかったのです。

私の現実感覚としては、「ナバサの民は恩を忘れない」と語るタバサの人たち自体が不自然ですし、
「票のための行動なのか、わしらのための行動なのか、それくらいわかる」というセリフも不自然です。
一部にそういう人がいても、国を動かすほどの人数になることはありえない、と私は考えています。
そんな私があえて2巻のような内容を書いたのは、「そうあって欲しい」と願っているからです。

普通の主人公が美少女に囲まれるというハーレム展開によって、
「そうあって欲しい」願望が描かれるのと同じで、
選挙が政策で動くことは不可能かもしれないが、せめて善意で動いて欲しいという
私の片隅にある一部の願望を具現化したものがこの結末です。

多くの物語が『ありえない理想』を描いているように、
選挙による『ありえない理想』を描くのもまた面白いじゃないか。

そう思い、楽しみながら書いていました。


もう一つは人を信じることの難しさについての考えです。

まだ2巻が出てそう時間は経っておらず、感想も友達経由でしか収集しないため、
今のところどんな感想が出ているのかはわかりませんが、
書いている段階で賛否両論が分かれそうなのは、
ジュニアの立ち直るシーンと、捨丸関連のシーンと考えていました。
捨丸関連は後で触れます。

ジュニアのシーンで問題となるのは、ジュニアへの感情移入度でしょう。
ジュニアの弱さや行動に読者が共感を覚え、受け止めていただければ問題なく進めるでしょうし、
そうでなければ何かの引っかかりを覚えるでしょう。

そしてそれが、人を信じることの難しさです。

読んでいただいた方がジュニアに共感を覚えず、信じられない場合、引っかかります。
あ、もちろん、私のストーリーや文章の下手クソさによっての場合は、もちろん除きます。

私は引っかかることが不自然とは思いません。
むしろ私自身が、他人の作品として2巻を読んだ場合、引っかかるかもしれません。

本来であれば、ジュニアを弁護する人が出てきて、ジュニアの過去を語ってあげることで、
ジュニアへの感情移入度を上げなければなりません。

例を出しますと、スラムダンクで三井がひねくれていたとき、小暮が過去を語ってくれます。
ああいうキャラやシーンがあれば感情移入度が上がり、また見え方が違います。
それはスラムダンクのあのシーンを、小暮が語る回想シーン抜きで見るとわかりやすいと思います。

しかしジュニアにはそういう同情をしてくれる人はいません。
安西先生の立ち位置である、父親も死んでいます。
『僅かばかりの救い』がジュニアにはなかったのです。
それが、彼の置かれた状況です。

漫画は三井視点になり、その思いが見えますが、現実は端から見たり聞いたりしているだけです。
もし私がスラムダンクの世界にいて、小暮の話を耳で聞いているだけならば、
「自分で勝手に落ちていっただけだろ。自業自得だ」
と思い、三井を絶対に許さなかったかもしれません。
そもそも更生したこと自体をずっと疑ったかもしれません。
これは私が簡単に人を信じないからです。

だからこそ、漫画のように対象者の過去が見えないにも関わらず、
心の奥底にある純粋な想いを汲み取り、信じ続けたケネスは凄いのだと思います。
ジュニアに反発を覚えた方によって『人を信じることの難しさの可視化』を行うことで、
ケネスの凄みをお伝えすることができないか、というのが私の意図です。

ここで補足しておかなければなりませんが、
私が伝えたいのはあいつSUGEEE的なものではなく、
ただ単純に「ケネスのような心を【賞賛】したい」ということです。

ケネスはギフテッドの登場キャラクターにおいて、唯一モデルである人物が実在します。
その人物と出会ったことで私は大きな影響を受けました。
だから、死という人間における最大の未知、そして恐怖を突きつけられ、
それでもなお前を向き、人に優しさを向けられる人物の透明感と言葉の重さを知っています。
他の誰でもなく、そんな死に瀕した人物からの言葉だからこそ、ジュニアを変えられるだけの力を持ち、
そうした力は「現実に存在する」と私は確信しています。

そんな素晴らしい力を持つ人に対し、周囲からできることはほとんどありません。
かける言葉は同情にしかならず、共に笑えるようにすることしか、少なくとも私にはできませんでした。
そして時を経て、現在の私ができることは「賞賛」のみです。
優しさは素晴らしいことだ、なんてお題目では人の心は動かせないと思いますし、
押し付けとなってしまい、反発を生みかねません。
だから私は「賞賛」するのみです。

「賞賛」を物語の中ではなく、現実に落とし込み、可視化するため、
あえてジュニアの心の語り部は用意せず、現実に近づけました。
そして趣味嗜好、相性などなど、様々な要因から、
どうしても生まれてしまうストーリー展開への反発を『人を信じることの難しさの可視化』とし、
『現実における人を信じることの難しさ』を浮き彫りにすることで、
間接的に「ケネスの心の賞賛」にすることはできないか、
そしてそれに気がついてもらうことはできないか、と思ったのです。
まあ、それを行うには私の実力はかなり不足していると思っており、
この手法はもっと実力がついた上でやるべきではなかったか、という点が、2巻における私の最大の悔いです。

もちろんこの手法を取る前提に、ページ数の問題、視点変更の問題、キャラの多さの問題などがあり、
ジュニアの心を語る余地が少なかった、という部分があります。
ギフテッドが漫画で、ページに余裕があれば、勢いを殺しかねない視点変更もスムーズにできますので、
おそらくジュニアに感情移入させるため、ジュニアの過去シーンを入れていたと思います。
そういった意味でケネスとジュニアのシーンは
ギリギリの状況下で取った暴挙と言えるものかもしれません。



長くなってしまったので、とりあえずここで一度区切ります。
まだ続きはあるので、ぼちぼち書いていきたいと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


  1. 2012/05/20(日) 21:13:03|
  2. 本の解説
  3. | トラックバック:0

ギフテッド(1巻)の解説② ※ネタバレあります

こちらはギフテッド(1巻)の解説①の続きです。

※注意
編集者さんが見ても問題のない範囲で行う予定ですし、
その他影響がないだろうと思う範囲で書くので、足りない部分についてはご容赦を。
2巻まで読まれた方を前提として書くので、ネタバレが嫌な方はお戻りください。

またこれを読むことが蛇足と感じる人もいるでしょうし、表現一つを取られて叩かれるのも辛いので、
嫌悪を持たれる方は見ないでいただけると助かります。

それでは1巻の解説の続きを。
思い出したごとに書いていたりするので、読みにくい点はどうかご勘弁を。
楽しんでいただければ幸いです。
改行を入れるので、読まれる方は下のほうに行ってください。






























■前提
以下の内容は、いかなる作品、主義主張、個人あるいは企業を貶める意図も持っていません。
また私は一つの考えが正しいと思わず、物事は多面的だと考えているタイプですので、
解説はあくまで考えの一部であることをあらかじめここに記載しておきます。



インタビュー(http://news.dengeki.com/elem/000/000/438/438581/)でキャラを切ったと書いたのですが、
それが2巻で出てきた三里信一郎でした。
個人的には凄く好きなキャラクターだったので、2巻を書く上で、
このキャラを出せたことがとても嬉しかったです。
汚れた大人になってしまったので、こういう毒が詰まったキャラクターが好きなんです。

『絶対数感』という力が出てきましたが、これも投稿時からあったものでした。
人間に身につけられる力なのか・・・・・・という問題点がありますが、私はギリギリある範囲にしました。
一応、近い症状や現象は実際にありますから。
しかしもし自分にそんな力があったとしたら、精神が持つ自信はありませんね。
『絶対数感を持ちながら正常とは言えないかもしれないけど、正気を保っている』というのが、
すでに異常さの象徴であるように私は思えます。




天子峰の企業規模は3行ほどで片付けられてますが、計算するのに3日くらいかかっていたりします。
「ギフテッド」は2020年の設定なので、ここ数年の上位100社の規模を調べ、
成長率を割り出し、2020年の上位100社予測を出した後、
歴史上大きかった国や企業が世界の富をどれほど握ったかをメモしました。
そこで「かつてあった国や企業が握った富に色をつけたレベル」として、今の数字を上げています。
いやぁ、第一次世界大戦~第二次世界大戦くらいのアメリカとか大英帝国とかマジチートですよね。
おかげでありえない金額が出てしまい、この数字にしていいか随分迷ったのを覚えています。



もっと書きたいことはあったような気がするのですが、思ったよりも早く終わりました。
思い出したら追記をするかもしれません。
ひとまず次に、2巻の解説に移ろうかなと思います。

すぐなのか、少し空くのかはわかりませんが、またよければお立寄りください。
それでは失礼します。

  1. 2012/05/14(月) 22:34:27|
  2. 本の解説
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ギフテッド(1巻)の解説① ※ネタバレあります

今週ギフテッドの2巻が発売し、もしかしたらあとがきからこのブログ来てくれている人がいるかもしれないので、
せっかくだからあとがきで書ききれなかったギフテッド執筆の裏話や解説を書いてみたいと思います。
もちろん編集者さんが見ても問題のない範囲で行う予定ですし、
その他影響がないだろうと思う範囲で書くので、足りない部分についてはご容赦を。
2巻まで読まれた方を前提として書くので、ネタバレが嫌な方はお戻りください。

またこれを読むことが蛇足と感じる人もいるでしょうし、表現一つを取られて叩かれるのも辛いので、
嫌悪を持たれる方は見ないでいただけると助かります。

それでは1巻の解説を。
思い出したごとに書いていたりするので、読みにくい点はどうかご勘弁を。
楽しんでいただければ幸いです。
改行を入れるので、読まれる方は下のほうに行ってください。
































■前提
以下の内容は、いかなる作品、主義主張、個人あるいは企業を貶める意図も持っていません。
また私は一つの考えが正しいと思わず、物事は多面的だと考えているタイプですので、
解説はあくまで考えの一部であることをあらかじめここに記載しておきます。


私自身、この物語のテーマの一つとして、
「もし世界が一つとなったとき、そのトップとしてどんな人間が相応しいのか」
というものを考えています。
英雄待望論は昔からありますが、
「じゃあ現実的にその英雄とはどんな人なのか? どんな人なら英雄足りえるのか?」
を掘り下げていってもらったものと考えていただいても結構です。
例えば全世界選挙みたいなものを行っても、その候補者と全世界の人間が話すことは不可能なので、
何かしら指針が必要となります。

おそらく指針として「経歴」や「演説」「政策」が挙がったりすると思いますが、
それらを知っても適切な判断ができるかは難しいのではないかと考えています。
その辺りは2巻で触れているので、読んだ方はわかるかなと思います。

となると、トップ候補者に特殊な試験を課す方が適する人材を継続的に導き出せるのではないか、
という案が、考えの一つとして浮かびました。
その案を掘り進めていったものが2巻の最後で昴が語りました「賢人政治」であり、天子峰のシステムです。
そしてこれが「ギフテッド」の出発点でもあります。

では世界にトップに立つ人間には何が必要か、それをどうやって見分けるかが問題となります。
この辺りは1巻で描いていることですが、
私が1番最初に世界のトップに持っていて欲しいと思った点は「命を賭ける気概」です。
そして2番目に挙げたのは「現状を把握し、課題を見据えつつ、明確な目標を見つける能力」であり、
「見つけた目標を実現する力」です。

これは他の人が考えてみれば、全然違う結論が出てくるでしょうね。
皆さんが考えてみて、「こういう要素の方が必要ではないか」と思えば、
聞いてみたいなという思いがあります。

メールで私にぶつけてみてくれてもいいですし、気軽に雑談や質問を送ってもらって構わないです。
ただ叩かれると私の心が死ぬので、それはできればご容赦を。


話を戻します。
この2番目に関しては、おそらく会社員経験者ならわかりやすいと思いますが、
当たり前のように見えて非常に難しいです。
歴史を紐解いて見ても、偉大な指導者と言われる人ですら、できないことが多いように思えます。
この辺り、すでにライトノベルではわかりにくいテーマであるため、
これじゃあキャッチーさが出ないようなぁ、と思っていたりします。

さて実際の試験内容ですが、現実に実現できそうなものであれば、
なかなかインパクトを出すのは難しいですし、ライトノベルである必然性も低くなります。
そのため「ギフテッド」で強く意識しているのは、

『人間に可能だけれども、現実では不可能であること』です。

私はギフテッドを「机上の空論を積み重ねたお話」であると認識しています。
1巻で「アインシュタインクラスの人間が集まり、きちんと評価されていれば、
二世代くらいの技術の進歩は可能だ」といったような内容を書きましたが、
これぞまさに「机上の空論」の集大成ではないかと思います。
それが実現している架空世界が「ギフテッド」です。

そうした土壌の上に、試験内容を設定しました。

「命を賭ける気概」はわかりやすいことなので試験でも簡潔に終わりますが、
「明確な目標を見つける能力」についてはそれなりの舞台が必要ではないかと感じました。
それが1巻に描かれていたことです。
ギミックを減らし目にしたのは、もちろんページの都合上もありますが、
何より「明確な目標を見つける能力」を選別するのに、必要か不必要かで考えたとき、
不必要ではないかと考えたため、やめておいたということが影響しています。

ここまで書いてきたテーマに関しては、無論2巻にも影響があるですが、
その点はまた別途2巻についての解説で書こうかなと思います。




1巻を読まれた方にはすでにおわかりだと思いますが、
厳密に言えば「ギフテッド」は「クローズトサークル」や「サバイバルゲーム」
「ギャンブル」「頭脳ゲーム」とは違います。

「クローズトサークル」と言うには天子峰市の一般市民がいますし、
合格者に制限がない以上、「サバイバルゲーム」「ギャンブル」「頭脳ゲーム」でもありません。
天子峰市での環境は「まだ見ぬ外国の地に、いきなり連れてこられた」という状況が
表現として一番近いのではないのだろうかと思っています。
そのため「ギフテッド」の物語のメインは「サクセスストーリー」であり、
頭脳戦や心理戦はサクセスストーリーを彩る装飾と捉えています。

私はサクセスストーリーと言うと、ドラマ「お金がない」が浮かぶのですが、
ああいう系のドラマや映画でも頭脳戦あり、心理戦ありなイメージがあります。
そのためそういう感じのストーリーとして受け入れられるのかなぁと思っていたら、
頭脳戦や心理戦で評価いただいたことが多かったようなので、
そんな風に捉えられるんだなぁ、と思ったりしてました。

ただ頭脳戦や心理戦を見て、「頭脳ゲーム」的なイメージで読む方がいることも予想がついていましたので、
(まあ、頭脳ゲームも一面では正解と考えており、この辺りの認識は私自身もはっきりとしていないのですが)
なるべく違和感を覚えないよう、1巻のあとがきには私が一番近いと捉えている「サクセスストーリー」
という単語を入れてみました。
この辺り、皆さんにはどのように伝わりましたでしょうか?




1巻では誰も「天子峰市の一般市民と積極的に交流を図ろうする人」がいませんでしたが、
交流を図ろうとする人がいてもよかったなぁ、と思っています。
ただこういった観点で行動するキャラクターが現在私のイメージではおらず、そうなると、
ページ数とキャラクターの人数上、入れられないと判断しました。

私は常に相手方の立場に立って考えてみることが大事だと思っていますが、
皆さんが「天子峰市に住む一般市民」だった場合、候補生に対してどう接するでしょうか?

人権がないのだから好きに襲ってもいいと考えるでしょうか?
それとも何となく怖いから近寄りたくないと考えるでしょうか?
候補生なんだから、ちょっと話をしてみたいと考えるでしょうか?

正解はありませんが、いろんな人がいたと思います。
中には仲良くなったり、援助をしてくれる人間がいたでしょう。
そうなれば環境は随分良いものになったはずです。

こうした交流を最初に考えそうなのが一宮忠志ですが、彼からこの提案が出て来ませんでした。
発想がなかったのではなく、教官に恐怖を染みこまされ、人権がないと脅されていたからです。
この辺りに触れませんでしたが、彼の臆病さと未熟さが出ている部分なので、
ここに書いておこうなと思いました。
当然綾芽も外との交流の可能性に気がついていますが、
時間がかかる案であり、危険性も当然あるため、案を廃棄しています。
それでも彼女なら、交流が有効となるタイミングがあった場合、きっと持ち出してきただろうと思います。




「クローズトサークル」では、そこでの不協和音や裏切り者が出るのが当然ですが、
あえて出していないのはやはり「クローズトサークル」とは違うものだからです。
もし「クローズトサークル」なら、主人公を替えていたかなーって思います。
「ギャンブル」や「頭脳ゲーム」「サバイバルゲーム」だとしても、
弥助は非常に主人公に不向きなキャラだと捉えています。
なぜなら驚きが少なく、分析屋であるため、読者の裏をかくといった点がとてもしにくいキャラだからです。
もし「ギャンブル」や「頭脳ゲーム」「サバイバルゲーム」をテーマとしていれば、
「閃きに優れたキャラクター」か「共感を得られるキャラ」を主人公に据えたと思います。

また弥助はギリギリの一発逆転もやりにくいキャラではあります。
人の隙を突くのではなく、地味に分析を積み重ね、思考を進めていくタイプだからです。

ゲーム的なものであればゲーム作成者の意図があり、そこに隙があったりしますが、
「学校の試験」に裏道がなかなかないように、「企業での仕事」にも一発逆転は少ないです(ないとは思いませんが)。

私は福本作品を当然読んでおり、当然のごとくアカギなども大好きですが、
アカギが企業人として働く場合、それは指導者足りえるでしょうか?
おそらく答えは「アカギは企業で働かない」というもののような気がしますが、
指導者となるとまたちょっと趣が異なってくると思います。
あ、銀二なら指導者として優秀だと思います。広い視野を持っていますし。
だから誠京の会長である蔵前は欲しがったんでしょう。

つまり、「企業」と「頭脳戦」では求められるものが違っていると私は感じています。
「ギフテッド」は当初から「企業の試験」と言っています。
本の中で「現実の企業における論理」を語っている以上、
「ギャンブルやゲームでの一発逆転によるカタルシス」と比較し、
中高生がメインターゲットであるライトノベルにおいて、何を優先し、どのような結論を出すべきか。
現実において一発逆転で物事が解決することが少なく、
「地道な努力と今できる最善の手を打ち続けることこそが、物事解決の近道」
とかつての自分に言ってやりたい思いがある私にとって、悩ましい問題なのは確かです。
どの辺りまでエンターテイメント性を絡ませるか。それは今でも私の中で大きな課題です。

また「ギフテッド」が「企業の試験」である性質上、「裏切り者が出ない可能性が高い」と見抜き、
上記の「クローズトサークル」などとは違う話だ、と気がついた方もいると思います。
またその後、副教官から
「会社は皆さんの行動をよく見ておりますので、ご安心ください」
と言われたことで裏切り者が出ないことは確定的になったと感じられた人もいるでしょう。

元々「受かる人数について指定がない」試験で他人を蹴落とす必然性は低いです。
候補者が減っても、合格者となれる可能性は上がりませんから。
さらに「命を賭けた試験を合格してここまで来ている」以上、迂闊な行動はしにくいと思います。
加えて「会社はよく見ているよ」とまで言われると、
「仲間となった振りをして裏切る」よりも「仲間となった振りをしてうまく使う」方が
ずっとメリットが高いように私は思います。

皆さんが人事担当であれば「自分の利益を考えて人を裏切る人間」の評価は、どうしますか?
もし能力があっても「そんな奴は信用ならん!」として切って捨てる人も多いでしょう。
そのため「クローズトサークル」や「サバイバルゲーム」などでは非常に有効な裏切りも、
「企業の試験」であれば、非常にリスクが高いものになると思います。

もう一つ例を挙げましょう。
例えば部活で言えば「大会には何人でも出られるがコーチが認めてくれるかわからない」状況であった場合、
「命を賭けた試験」を超えてきた自負がある人たちは、
「まずは自分の能力を見せよう」と考える傾向が強いのではないでしょうか。
自分に自信があるでしょうし、自分が姑息な手を使った時点で、見破られた場合、墓穴を掘ってしまいます。
加えてコーチから「行動をよく見ていますよ」と言われれば、より姑息な手は使いにくいです。

だからこそ心理戦もので恒例であり、一種の見せ場である「裏切り」は、
2巻で出てきた「メリットとデメリット」を考えるとデメリットが非常に大きく、
「裏切り」は入れたかったものの「入れた方が不自然」であると考え、話に入れませんでした。

また「集団から一人離れる」こともデメリットが大きいです。
評価する側に「自分とは仕事がしにくい」と思われた場合、
どれだけ能力を見せても逆転は難しくなるためです。
完全に一人で行動し始めたのが伊勢七彦しかいなかったのは、
こういった点を候補生がたち考慮し、迂闊な行動を避けた結果でもあります。

無論、七彦は瞬時に全体像を見抜き、抜けても大丈夫と判断しています。
この点が候補生の中で、七彦がもっとも「思考の瞬発力」と「行動力」に
優れていることを示す点であると考えています。

こういった何気ない点の積み重ねが、現実世界では大きな差となって現れると私は思っています。
例えば「一日に一回、瞬時に教科書を十ページ覚えられる力」よりも
「毎日二時間勉強できる力」の方が最終的に学力は上になるのではないでしょうか。
これは場合によっては違いますが、「一日に一回、瞬時に教科書を十ページ覚えられる力」は
能力に溺れてしまう可能性が高く、記憶が継続する努力を怠りがちになりやすいと思われるため、
ずっと努力をしている人には最終的に負けてしまう可能性が高いように感じます。
まあ、うさぎと亀のお話ですね。

あ、これは一面的な話なので、やり方次第で
「一日に一回、瞬時に教科書を十ページ覚えられる力」が圧勝だと思っています。
しかし「才能をうまく活用すること」が人間にはなかなかできません。
その難しさを「ギフテッド」の登場キャラクターたちが認識しているからこそ、
頭がいい人間よりも、現実を認識し、常に最善の手を打とうと冷静に考える弥助のようなキャラが評価され、
活躍できるのではないかと考えています。
またその地道な積み重ねを行う性格ゆえ、企業人としての評価もあるのではないかと思います。
逆に言えば、弥助が評価されるためには「いつも冷静に最善手を打とうとする人間の怖さ」を
認識していなければならず、高校で弥助の評価が低いのもそのことが一因だと考えています。
(私の中では単純な能力だけで言えば、弥助は一宮さん、枇杷島さん、加茂さんよりも低いですが、
精神面を入れた総合力では、冷静な判断ができる分だけ弥助が上と考えています)

書いてて思いましたが、こういうのって伝えにくいですよね、ホント。
私にもっと文章力があればうまくお伝えできると思うのですが・・・・・・頑張って鍛えていきます!



思いつくまま書いてきましたが、長くなってしまったので一度切ります。
まだネタはあるので、また続きを書こうかなと思います。

それではこんな長い駄文を読んでくれた方、ありがとうございました。

  1. 2012/05/12(土) 21:48:41|
  2. 本の解説
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ギフテッドⅡ

ギフテッドⅡ、本日発売です!

1巻のときの発売日は物凄く緊張して、
何も手につかなかったのですが、今日は意外にも平静でした。
う~ん、慣れたのか、達観したのか・・・。

まあ2巻なのでいきなり売上急上昇!ってことはないと思いますが(汗)、
とにかく売れろ~売れてくれ~、と念じています。

もし買っていただけた方がいたならば、感謝感激です!
本当にありがとうございます!


~あらすじ~

「──君は、国が欲しくないかい?」
小国の運命をめぐる、策謀のゲームが始まる。

 天子峰の幹部候補生となった俺と綾芽、エルに与えられた最初の仕事。それは「国を手に入れること」だった。
 ──ナバサ共和国大統領選挙。その三人の候補者の中から一人を選び、選挙に勝利し、天子峰の為になる大統領に仕立てろ。
 候補者は三人。金に汚い大富豪、前大統領の道楽息子、天子峰に反感を持つ軍人。誰を選べば勝利できる?
 そんな策謀にまみれた選挙戦の陰で糸を引くのは、俺たちだけではなかった──。


ギフテッドII (電撃文庫)ギフテッドII (電撃文庫)
(2012/05/10)
二丸修一

商品詳細を見る
  1. 2012/05/10(木) 19:05:28|
  2. 小説紹介
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今週の作業用BGM

今週の作業用BGM。
週刊VOCALOIDランキング #239よりマイリス入りのリスト。




ぺぺろんPのキャッチーなメロディはとても聞きやすくて好き。




軽快なメロディが気持ちいい。
今は聞き込んでないけど、また気持ちが合ったときにリピートしそう。




いい調教。個人的には曲に合った声の人がうまく歌ってくれるとそっちが好きになるが、
すでに原曲で完成されているなと感じるのもあり、これもその一つに感じた。




原曲のほうが若干好きだけど、東京テディベアをかつて聞きまくり、
最近カラオケでも歌ってきただけに、入れないわけにはいかなかったでござる。
おればななPのカバーはまじ凄いわ。

ネトゲ廃人シュプレヒコールのカバーも貼ろうかと思ったけど、まあカバーなので一曲に。
otetsuさんの新曲そろそろ来ないかな。
  1. 2012/05/06(日) 17:06:51|
  2. 日記
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