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「女の子は(中略)ありました」解説 ※ネタバレあります

どうも二丸です。
それでは宣言通り
「女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました」
の解説(?)をしていこうと思います。

今回は解説というより、私が今作にたどりつくまでの思考の軌跡といいますか、
こういうことを考えながら作品を作っていった内容となります。
当然ネタバレはありますし、もしかしたら楽しめていた人が
楽しめなくなってしまうといったこともあるかもしれません。

なので少しでも嫌な予感がした人はすぐ「GO HOME!」でお願いします。
そして叩かれると心が死ぬのでご勘弁を(懇願)。

では読まれる方は下のほうへ。































新作を書くとなったとき、私が最初に考えたのは、
ライトノベルの王道ジャンルで一作書いてみたい、ということでした。

私がライトノベルの王道と考えているのは「萌え(ハーレム等を含む)」と「バトル」です。
そういったことからギフテッド1巻のあとがきで
「思いっきり逆走している」
といったようなネタをしました。
そのため安直ながら、今度は王道ジャンルで、と考えたわけです。

私はライトノベルにおいて、ジャンルは非常に大事なものだと考えています。
昨今のヒット作を見ますとほとんどが「萌え」か「バトル」に該当しているように見えます。
同じ「萌え」や「バトル」でも切り口や内容は作品ごとに全然違いますが、
大まかなジャンルといった意味では、ヒット作のほとんどがこの二つのどちらか、もしくは両方を看板としているように感じました。

ならばそこに「需要」があるはずです。
得意不得意、好む好まないに関わらず、市場に「需要」があるのならば、
そこに「供給」を投じてみたいと思ったのが今作を書くに至った最初の動機です。

漫画で例えるなら、私はもしかしたらヤングジャンプが一番向いているかもしれません。
でもジャンプでも書けるのなら、ヤングジャンプの内容をジャンプに載せようとするのではなく、
全力でジャンプにむいた作品を書こうと思った、といった感じです。


では「萌え」にするか、「バトル」にするか。
ここは非常に迷いました。
「萌え」と「バトル」を中心に様々な案を考え、消え、そしてまた考える、といったループで時間が過ぎていきましたが、その中で本として提供できるだけのものが今作であり、ジャンルで言えば「萌え」のほうでした。

ただ今作が最初に形となったのは、「萌え」でありながら「バトル」もちょっと含んでいるという、
個人的には美味しい折衷案となるようなものだからだったと思います。

ここで問題があります。
思いついたのはいいのですが、作品のアピールポイントを編集さんに伝える手段が思いつかなかったのです。
私はキャラから作るのではなく、必ずテーマやストーリーから作ってしまう癖があるため、
プロット(あらすじのようなもの)で今作を伝える自信がありませんでした。

「主人公が気がつかないところで女の子が超人的な動きで牽制し合っているんですよー」
と伝えても
「?? どこが面白いの?」
と誰もがなってしまうように思います。
今作の大きなアピールポイントとして『無駄な解説』があると私は考えているため、
『いきなり一作書き終えた状態で編集者に見てもらう』といったことをするに至ったわけです。
幸い評価をいただき、何回かの改稿を経て発売となりました。


そんな感じで簡単に今作に至ったわけを書いてきたのですが、
ここからは今作で私が注意した点などを書いていきたいと思います。


■注意した点
①男はなるべく少なくする
 一番原案の段階は「席決めシーン」でした。
 そこから考えると、ハーレム系にするのがいいと思ったわけですが、となると男は少なくしたいと思いました。
 なぜなら別の男を出すことにより「こいつに取られるかも」といった懸念を読者に一切感じさせたくなかったためです。

 例えば四角関係のラブストーリーでよくあるのですが、主人公とヒロインがカップルになると、エピローグでちゃっかり主人公を好きだった女の子とライバルがいい感じになっているのってありませんか?
 私はそれがダメなタイプです。
 なぜなら「主人公を好きだった女の子は、その主人公を想う一途さに魅力があった」と考えているためです。
 この類の魅力は「他の男をいいと思う」といったことでも魅力が落ちると思います。
 有象無象の女の子はライバルが好きだけど、重要な女の子は主人公が好き、といった構図はよく使われますが、これは九十九%の男性が死ぬ時点でできないと思いました。
 だから男をなるべく少なくしたかったのです。

 かといって、男を主人公以外ゼロにしたくはありませんでした。男同士じゃないとできないノリ、会話があるからです。
 そうしてホルスト(ホモ)が誕生しました。
 ホモなら男を出しても女の子を取られる心配がなく、ギャグにも使えるじゃないか!と思った瞬間が、今作が書き上げられる確信を持った瞬間でしょう。

 ここでホルストは読者に受け入れられるのか? との懸念が出ましたが、セイバーマリオネットJに花形美剣という偉大な先駆者がいるので、大丈夫ではないかと考えました。


②風刺的要素を入れる
 ホルストにはもう一つ重要な役割があります。
 「風刺」としての役割です。
 これは以前このブログで「ラブコメだけならもっとうまい人がいるだろうから、自分らしさをできるだけ出そうとした」に繋がってきます。

 ギフテッドは私自身「サクセスストーリー」としており、ライトノベルということで意図的に設定を大げさにしたことで、見る人によっては「中二系心理戦」となるかもしれません。
しかし会社員三年目以降くらいの人が読むと「あるある」となった方もいてくれたのではないでしょうか。

 年齢などによって印象が変わる点を入れたかったというのが私にはありました。
 ということでホルストの登場です。
 彼の女性観は偏見に満ちています。
 満ちています……が、私の中で「あるある」と思っている部分があります。
 彼の意見は作中で全部外れているのではなく、半分は正解です。あくまで半分ですが。
 そんなところを楽しんでもらえたらなと思っています。

 あ、はい、女性の皆様申し訳ございません!(土下座)
 女性のことを悪魔だとかそんなことはまったくもって思っておりません!
 私は女性を心から尊敬しています!


③なるべく軽くする
 エンターテイメント作品にとって、作者の意図が読者の意図と一致せず、作者の伝えたいことが押し売りになってしまうことがよくあるのではないかと思います。
 元々それを売りにしている作品なら独特の味として受け入れられるものでも、エンターテイメントならば邪魔なものとなります。
 そのため真面目となる箇所、主人公の信念となる箇所、といったところはできる限り削りました。
 具体的に触れますと、主人公である湊の両親に対する思いや両親がどういった経緯で亡くなったのか、父親の格言など、以降のノリとバランスを見て、改稿の際にバッサリいきました。
 ついそういったところを書いてしまうのですが、今作では合わないと思ったためです。

 その他、そこもバッサリいったのかよ、というところも結構やってます。
 ストーリー的なものだけではなく、キャラについてもエンターテイメントということで、初期状態と比べてがっつりと改変及び属性の追加をしました。
 これらは作品としての統一感、そしてエンターテイメントとしてやる必要があったことだと思います。

 こうした改稿は読者の方々に、
「いい暇つぶしにはなったよ」
「二丸ってやつは馬鹿じゃねーの」
と言ってもらうためだと思っています。
 もし上記のように感じていただければ、本当に嬉しいです。



 ……と、長くなってしまったので一旦切ります。
 ギフテッドのときと違って裏設定的なものを書けなくて(今回は書くことがなくて)、面白みに欠けてたら申し訳ないです。
 もう2点くらい(増えるかも?)注意したことを書いていこうと思います。

 目安は一週間~二週間くらいで。
 ではでは、また。

  1. 2013/07/19(金) 23:39:03|
  2. 本の解説
  3. | トラックバック:0

「女の子は(中略)ありました」本日発売です

「女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました」が本日発売です!

きっとこの長いタイトルのせいで苦しまれた方々がいるでしょう……。
申し訳ありません……。
かくいう私も面倒くささから、ついにブログのタイトルに(中略)を導入してしまいました……。

さて、それはそれでおいておきまして、解説についてです。
発売日に解説を書くのも何なので、一週間後ぐらいを目安で。
ギフテッドのときと同様、読んでくれた方前提で書くつもりなので、ご了承あれ。

また今作を読んで気に入ってくださった方は、前作「ギフテッド」のほうもよろしくお願いいたします。

ということで、「女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました」をぜひとも読んでみてください!

よろしくお願いします!


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 一狩りされようぜ!? 貴重な男子を巡り、美少女たちの熾烈な戦いの幕が上がる!

 99%の男性が死滅した世界。希少な男子・久我原湊は、4年間隔離された生活を送っていたが、晴れて男女共学の高校へ編入することに。美少女だらけ・女子率99%という学校で、優しい女の子たちとのハーレム生活を夢見る湊だったが、女の子たちは強くなりすぎていた(物理的に)。美少女……でも異能持ち、美少女……でも超肉食系、美少女……でも妹!? 男の妄想を叶えてぶち壊す、波乱だらけの学園ラブコメ!
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女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました (電撃文庫)女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました (電撃文庫)
(2013/07/10)
二丸修一

商品詳細を見る
  1. 2013/07/10(水) 21:56:45|
  2. 小説紹介
  3. | トラックバック:0

女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました

どうも二丸です。お久しぶりです。
確認してみたら、前回更新が6月10日って……1年も経ってることに我ながら驚きました。

直接メールをくださった方、ありがとうございます。
声を直接いただき、励みになりました。
返信もさせていただきましたが、この場にて改めて感謝いたします。

さて、このたび電撃文庫から7月に新刊が出ることになり、
公式ホームページでも絵つきで紹介されましたので、
このブログでもお知らせしようと思い、久しぶりの更新です。


タイトルは

「女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました」

……って、クソ長いな。
電撃文庫の歴代の作品で見ても、もしかして1番の長さでしょうか?
とにかく今回のタイトルは『内容が一目で「ラブコメ」とわかるようにしたい!』
というのが1番にあったので、書店で通りかかった方々にそれが伝われば幸いだと思っております。


ということで今作はラブコメです。
前作と全然方向性が違います。
そのため前作のノリを期待されている方には申し訳ないなぁという気持ちがあります。
でももし許されるなら、二丸がラブコメ書くとこうなるんだ~ってなノリで、
前作を読まれた方も手に取っていただければ嬉しいです。

また電撃文庫の先生方にお会いしたとき
「ギフテッドの3巻どうなの?」
と聞かれることが多いのですが、今作のあとがきで触れていますので、
手に取って見ていただければ幸いです。


今回ラブコメを書いたのは、私自身が書きたかったからです。
今作は別の企画が進んでいる最中に書いており、何の前触れもなく編集者さんに
「実はこんな作品を書きましたので読んでください」
と一冊分の原稿を送るという暴挙(?)から始まりました。

ちなみに電撃の忘年会で某先生(許可を取っていないので名前を伏せますが)にこの話をしましたところ、
「二丸さんはあいかわらず電撃文庫の狂犬やわ~。真似できんわ~」
的なことを言われました。
……あれ、そんなキャラクターで定着してるん?


私は自分の完全な好みで書きますと、ギフテッドのように、
「地味!」「重い!」といった話にどうしてもなってしまいますが、私自身、ラブコメも好きです。
いつか書いてみたいと思っていたラブコメが
こうして本として出版できることができてホントによかったと思っております。

ただ、ラブコメだけではこの世に私よりうまい方が腐るほどいると思うので、
アクにならない程度に「二丸らしさ」みたいなものが入れられたらなと思って書きました。
今作ではギフテッドのように解説することはあまりないのですが、
今作のコンセプトや注意した点、どのような考えから今作を組み立てていったか、などを混じえて、
作品発売後にまた何かしら書きたいと思っておりますので、もしよければのぞいてみてください。


それでは最後は今作のあらすじで締めさせていただきます。

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 一狩りされようぜ!? 貴重な男子を巡り、美少女たちの熾烈な戦いの幕が上がる!

 99%の男性が死滅した世界。希少な男子・久我原湊は、4年間隔離された生活を送っていたが、晴れて男女共学の高校へ編入することに。美少女だらけ・女子率99%という学校で、優しい女の子たちとのハーレム生活を夢見る湊だったが、女の子たちは強くなりすぎていた(物理的に)。美少女……でも異能持ち、美少女……でも超肉食系、美少女……でも妹!? 男の妄想を叶えてぶち壊す、波乱だらけの学園ラブコメ!
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  1. 2013/06/07(金) 22:58:53|
  2. 小説紹介
  3. | トラックバック:0

今週の作業用BGM

最近ちょっと離れていた今週のBGMを。
今回は新旧関係なく、現在進行形で聞いているものを。




EZFGさんはサイバーサンダーサイダーからのファンです。
センスが凄く好き。
今回は歌ってみたでいいのがあったので、そっちを掲載します。




ちょっと前にハマり、また再びヘビーローテーション中。
激しい曲調が多いボーカロイドの中で、静かで透明感のある雰囲気で素晴らしいと思うのは久しぶりだった曲。
心に染みるような曲調で、メロディが滅茶苦茶好み。
こういう曲がもっともっと評価されて欲しいですね。




イントロのリズムが耳から離れない……。
最初は激しすぎるかなぁと思ってましたが、段々ハマっていって、よく聞いています。




トーマさんもバビロンからずっと追っている人です。
荒廃してカオスな感じがいつもカッコイイ。
そんなトーマさんの楽曲でも、個人的にはバビロン以来のヒットでした。
トーマさんの曲はうまい人が歌うとさらにカッコイイので、凄い人が出てこないかと期待中。


  1. 2012/06/10(日) 18:20:56|
  2. 日記
  3. | トラックバック:2

ギフテッド(2巻)の解説② ※ネタバレあります

ギフテッドの2巻が発売し、もしかしたらあとがきからこのブログ来てくれている人がいるかもしれないので、
せっかくだからあとがきで書ききれなかったギフテッド執筆の裏話や解説を書いてみたいと思います。
もちろん編集者さんが見ても問題のない範囲で行う予定ですし、
その他影響がないだろうと思う範囲で書くので、足りない部分についてはご容赦を。
2巻まで読まれた方を前提として書くので、ネタバレが嫌な方はお戻りください。

これはギフテッドを楽しんでいただいた方により楽しんでもらえるよう、補足をするものです。
そのため、読まれた方の考えや抱いた感情を否定するものではありません。
ギフテッドの作品を否定するものだとしても、それは真実だと思います。
私の解説などは、所詮盤外からの後付けです。
ただ作者はこう考えていた、という発見によって、楽しんでもらえる方がいれば幸いと思い、書いていきます。

これを読むことが蛇足と感じる人もいるでしょうし、表現一つを取られて叩かれると心が死ぬので、
嫌悪を持たれる方は見ないでいただけると助かります。

それでは2巻の解説を。
思い出したごとに書いていたりするので、読みにくい点はどうかご勘弁を。
改行を入れるので、読まれる方は下のほうに行ってください。



























■前提
私は一つの考えが正しいと思わず、物事は多面的だと考えているタイプですので、
ここに記載することも考えの一部であることをあらかじめここに記載しておきます。



さて今度は、捨丸について触れましょう。
一言で表現するなら、『問題児』です。

これはあとがきがもう1枚あればネタにしようと思っていたのですが、
プロット(あらすじのようなもの)を提出したとき、編集者さんに「いいですか?」と確認し、
初稿を書き上げた後でも「やっぱり削除しましょうか?」と問い、
修正後も「大丈夫でしょうか?」と聞いたりしました。

それほど私自身入れるか悩みながらも、プロットの段階から入れていたのは、
彼の持つ『暴力』と『不確実性』が欲しかったからです。

1巻や2巻でも強調されていますので、繰り返しになってしまい申し訳ないのですが、
私は『暴力』を非常に強いものだと思っています。
どれだけ頭脳を巡らせても、『暴力』はあっさりと覆します。
それほど恐れるべきものなのだと考えています。
現実において『外交力』が『軍事力』と連動しているように、これは外せない点だと考えています。
そのため国の行く末がかかっているのに、
『暴力』や『軍事力』が関わってこないのは、私にとって不自然に感じるものでした。

最近のアラブの春などが最近の代表でしょう。
むしろ荒れるのが当然だと私は思っています。
そのため最後のクーデターは、私にとって外したくないものでした。

個人における『暴力』と軍隊における『軍事力』はそれぞれ使いどころが違い、役割と使い方があります。
極論を言えば、範馬勇次郎が味方にいれば、選挙で策を弄する必要なんてありません。
相手を潰して終わりですから。
逆にこのとき、軍隊で攻めると目立つので不向きだと思います。
そのためもし捨丸の改造が完璧に行われていれば、
『頭脳』も『感情』も立ち入る余地はなく、捨丸が綾芽とケネスを暗殺し、勝負はそれで終了だったと思います。

こうしたことができることに『個人の暴力』のメリットがあり、
倫理を捨てても叶えたいことがあるならば、手に入れておきたいものの一つだと私は思っています。
様々な戦争時に人体実験の話が出てくるのは、それを証明するものに思えます。
そうして生まれたのが捨丸です。

現在でも両足義足の世界記録は10秒台ということを知り、
10年後、しかも技術が現実より発展した世界においては、
人体改造すれば相当なところまで行くだろうと考えています。

「ギフテッド」には「世界のトップに立つ人間とは、どんな人間か?」というテーマがある以上、
あらゆる面において人間の限界を探りたいと私は思っていました。
それは無論、頭脳や精神においてだけではなく、肉体としても、です。

じゃあある程度の「軍隊」と倫理を抜いて改造された「個人」はどちらが強いのか。
これに対し、私の出した結論が、個人の方が強いのではないかというものでした。
それは私の予測ではなく、提示として2巻に書かせていただきました。

今度は『不確実性』についてです。
戦争は思い通りにいきません。
歴史を調べるほど、おいおいと言いたくなるような些細なことが戦争の趨勢を決めた出来事が出てきます。
その『不確実性』をいつ爆発するかわからない爆弾のようなキャラクターに託したい望みが私にありました。
また平和な日本にいると見落としがちですが、『暴力』は世界的にはよく使われる手法であり、
国によっては当たり前のように使われる点も、『暴力』を象徴するキャラクターを入れたかった部分です。

研究所からの脱出、そしてクーデター時の捨丸の動きは、
『暴力』や『軍事力』によって積み上げたものも簡単に崩壊してしまうこと、
そしてエンターテイメントとしての演出面を考慮した上で決めました。

しかし頭脳戦を期待している方からは非難が出そうだなーと思っていたため、
編集者さんに何度も確認していたわけです。
ただ医局内での政治闘争とは違うため、頭脳による争いだけでは不自然と考えており、
『捨丸を入れる』というのが、プロット段階からあったわけです。

まあいろいろと書きましたが、純粋に楽しんでいただければこれ以上嬉しいことはありません。

なお、もし捨丸がカットだった場合、上記のコンセプトがなくなり、ページ数にも余裕が出るため、
次善の案として用意していたのは『候補者三名によるテレビ討論会と、その裏幕』でした。




せっかくクーデターのところの話が出たので、長良喜平の動きに関しても少し触れましょう。

長良喜平は海外で活躍していたサラリーマンのため、
政情不安定な国でクーデターが起こっているのは当然のごとく知っていますし、
軍事が国にとって大きな要素であることは肌で知っています。
そのため取った手法が、軍隊の情報を操るというものです。

彼の性格を考えると、三人の候補者の中で一番やりにくかったのは将軍でしょう。
一番自分の思うように動かせませんから。
それを理解していながら、サラリーマンの優秀さを誇示したい彼は、後から候補者を選ぶ状態にしています。
その状態とするには、勝てる算段がなくてはなりません。
そのため彼が誰を敵に回しても勝てるようにした手法として、

・ジュニアは過去の醜聞を集める
・大富豪は汚職の事実を突き止める

となっています。
これらは切り札として取っておき、いざというときの交渉材料としていました。
あっさり公表しては手を結ぶのは難しいですが、内に秘めておくことで、
手を結ぶ可能性も考慮していたのです。
そのおかげで、大富豪を一本釣りするという方法を取ることができました。

しかし将軍にはこれといって弱点と呼べるものがありません。
そのため彼が用意したのは、軍隊の情報を操るというものです。
他の候補者の弱点を握る努力と同様の努力で、軍にシンパを作ったりや仲間を潜入させ、
自分の思い通り動かせるようにセッティングをしていました。
もし応援する候補者が将軍以外であった場合、彼はきっと
『将軍が国を売ろうとしている』など、将軍に不信感を抱かせる情報をばらまき、
将軍を軍のトップから引きずりおろしたことでしょう。

今回は味方だったのでその方法は使いませんが、勝利を確実にするために、工作はしていました。
それは将軍の信望を高めさせる情報を流す、というものです。
独立戦争を戦ってきた兵士は将軍を信じていたので、それに油を注いでおいたのです。
そうしておけば万が一負けたとしても、クーデターが起きて、ジュニアと大富豪を殺すことにより、
自動的に勝利が転がり込んできます。
この点は先ほど解説した『どんな頭脳戦や結果も暴力であっさり覆ってしまう』ことを、
長良喜平がよく理解していたことがわかる部分だと思います。

ここまで万全にしていた彼が負けたのは、やはりジュニアの躍進でしょう。
これにより、軍隊内部でも揺れや焦りが出て、暴発が早まったのです。
独立戦争を戦った軍隊を外部の人間が思いのまま操るなんて、
相当な手並みを持った人でも困難なことだと思います。
ケネスによって発生した予定外の出来事が、成功率の低いクーデターを誘発し、
予想外の敗北をすることになったことは、彼のとっさの機転の弱さが出た部分でもあるでしょう。
恐ろしいほど準備周到で、逆にそれがゆえとっさの機転が弱いという点は、
日本人らしいと言えるかな、と思います。




今回綾芽は大富豪を選びましたが、その選択は間違っていたのでしょうか?
私は間違っていなかったと思います。
少なくとも、ジュニアや将軍を選ぶよりずっと良く、
現状の綾芽にとって一番組みやすい相手を選んだと考えています。

綾芽がジュニアを選んだ場合、ジュニアを立ち直らせる行動は取らないため、
反発し合い、長良喜平の罠もあって、勝利することは不可能だったでしょう。
問題は将軍を選んだ場合ですが、天子峰に反感を持つ将軍との融和を図れなかったと思います。
おそらく綾芽は下手に出ず、将軍とぶつかったでしょう。
それではダメだと考えて策を弄しても、理性が強く、戦場を潜り抜けている将軍は、
綾芽の企みに気がつき、より深い疑念を抱くようになると思います。
将軍を選べば勝てたかも、と思っているのは弥助であり、その判断は間違いだと思います。
そしてそれが弥助の能力の未熟さでもあります。

ただ弥助がリーダーとなった場合は別です。
弥助がリーダーで、将軍と組めば、ぶつかり合いはほぼなくなり、やがて友好も芽生えたでしょう。
弥助は打算のない人間(というより、頑張っている人に対しては私欲なしに理想論を優先する人間)なので、
将軍はその点に気がつき、態度を軟化させたと思います。
そうなれば勝てる可能性はあったでしょう。

綾芽の持つ『欲』と『甘さ』はアンバランスであり、それ故、大富豪を選ぶ以外
まともに策を進めることすら難しかった状況だったと思います。
エルは勘によって最善が将軍と見抜きましたが、
綾芽自身も自分の自己分析によって最善の相手を選んでいたのです。
綾芽自身が人によって最善は違うと言っていますが、あれが露骨に出ていたのが、候補者選びだったと思います。

ではどうやれば綾芽が勝てたかですが、一つは今より度量があればそれだけで勝てたと思います。
綾芽が大富豪を選ばなければまともに戦えない性格だった時点で度量は足りないのであり、
これが社交性の重要性とも繋がり、能力だけでは勝てないことを示しています。

それが現状ないということで、最善の大富豪を選んだ上で勝つには、『甘さ』を捨てる必要がありました。
私は思います。なぜ綾芽は、大富豪を裏切らせないため、人質を取ったりしなかったのか、と。
手段は何でもいいと思います。とにかく裏切らせないことは絶対にしなければならなかったのです。
例えば三里信一郎であれば、特に何もしなくても大富豪は裏切らなかったでしょう。
ズバズバ心の中を言い当てられれば、それだけで恐怖心は湧いてきます。
悪魔とも思える所業を平気で行う人間であることを知れば、裏切ったらどうなるか想像し、
長良喜平が声をかけても恐ろしくて裏切ることはなかったでしょう。

『甘さ』は人にとって魅力的に映るときもありますが、それは相手によってです。
弥助はその点に興味を抱き、評価していますが、その『甘さ』を弱みと思う人間には通用しません。
大富豪は少なくとも綾芽の『甘さ』を好意的に解釈する人間ではなかったので、
それが裏切るという結果に繋がったのだと思います。
『甘さ』を見せる相手を誤り、徹底さを欠いたところが綾芽の未熟さでしょう。
こうした精神のバランスの悪さが綾芽が能力を活かし切れていない点だと思います。

その点、弥助は安定度が高く、綾芽よりはずっと能力を発揮できています。
それが現れたのが『プロデューサー関連のシーン』であり、『長良喜平の勧誘を断ったシーン』だと思います。
『長良喜平の勧誘を断ったシーン』は断っても大変なことになりましたが、
もし断らなければ『弥助の心に弱点が発生する』という自体になったので、
助かって以後、大きな悩みの種となり、勝負を決定づけるものになっていたと思います。
それが断ち切れたのは、彼が優先順位を間違えず、私心の甘さを捨てた結果でした。
それが今回の二人の評価に繋がります。
綾芽は二面性の持つ長所と短所をもっと操り、長所を場面によって使い分けができるようになることで、
ようやく本当の能力が発揮されると思います。

結構散々に綾芽をこき下ろしていますが、それでも能力は秀でており、
弥助が綾芽の指示待ちになっている部分などは、絶対能力の差を示すものだと思います。
逆に安定した力を持っている弥助ですが、今までになかった感情が芽生えることで、
弱点が大きくなると同時に、自らの殻を破ってより大きな力を手にしようとしているのだと思います。

自分の力を発揮できず、一流になれないことはよくあることです。
しかし綾芽は負けたことがわかった後でも、最善を尽くし、ジュニアを勝つところまで持って行きました。
弥助も独白していますが、決戦投票に持ち込まれるには、弥助の力より、
綾芽の裏の動きのほうが大きな影響がありました。
大富豪を一本釣りされ、自らの勝利が得られないとわかっていながらも、
腐らず自らが作り上げた勝利への準備をうまく使いきったのが綾芽の矜持であり、
幹部として上にあがれるだけの資格を持ち合わせているところを見せつけた部分だと思います。
ここでもし腐っていれば綾芽は幹部に残ることはできず、幹部補に落ちていたことでしょう。


とりあえず解説はここで区切りをつけます。
ネタはあるんですが、書いていいのかなぁ、という部分もあるので。
もしこの点について解説して欲しいということがあればメールでどうぞ。
また、思いついたら追記するかもしれません。

今後はだらだらとした内容のブログを続けていくと思いますので、つまらん内容ばかりですみません、
と今のうちに謝っておきます。

それではここまで長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。


  1. 2012/05/30(水) 22:39:43|
  2. 本の解説
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